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生物学的製剤の種類

生物学的製剤とは

関節リウマチは長い間、治療が困難な疾患とされていましたが、近年、治療効果の高い生物学的製剤が登場し、大きな話題となっています。この生物学的製剤により、関節の痛みや変形に対する治療が可能になりました。 生物学的製剤は関節リウマチを治すための薬で、その有効性から研究が進み、現在9種類 の薬があります。その中には、関節リウマチの原因物質(サイトカイン)である「TNF」や「IL6」を抑えるタイプと、共刺激を抑えることで「Tリンパ球」を抑えるタイプがあります。効き目が異なるもの、幅広い症状や疾患に効果が見込めるもの、妊娠中や授乳中でも使用できるものなどがあり、患者様に応じたきめ細かい治療が可能です。 生物学的製剤は注射によって投与されるため、効果が早く現れる傾向があり、早いものでは治療開始後1~2週間で効果を実感できます。また、服薬による胃腸症状が出にくいこと、腎機能、肝機能に影響を受けないことも、生物学的製剤が推奨される理由の一つです。

生物学的製剤の治療をお勧めしたい方

痛みなどの症状が強く、なるべく早く改善させたい

抗CCP抗体陽性、痛みや腫れなどの症状が強い、または超音波検査で炎症の悪化が確認される場合には、初期の段階から生物学的製剤と飲み薬の併用治療が推奨されます。生物学的製剤は注射で投与されるので即効性が期待できます。加えて、早期に生物学的製剤によって症状が改善することで、その後の薬を減らす効果も期待できます。

メトトレキサートなどを服用すると吐き気、倦怠感などが強く出る

吐き気止めと胃薬を併用することで、症状をいくらか和らげることはできますが、同時に多くの薬を服用することは患者様に大きな負担となります。特に他の疾患をお持ちの場合、何種類もの薬を毎日服用するのは大変なことです。生物学的製剤は注射によって投与されるため、薬の服用に伴うお悩みを軽減できます。

メトトレキサートなどの服薬治療で、期待される効果が出ない

メトトレキサートは、薬物療法による関節リウマチの治療において最もよく用いられている薬です。しかし、多くの患者様はこの薬だけでは十分な効果が得られるわけではありません。メトトレキサートによる治療を6ヵ月続けても効果が出ない場合は、これ以上のメトトレキサートによる治療は効果が期待できないため、生物学的製剤による治療が推奨されます。

妊娠を考えている

関節リウマチに使用されるメトトレキサートなどの薬は、妊娠中や授乳中は使用できないため、使用できる薬が限定されます。生物学的製剤であるエンブレルやシムジアは胎盤を透過しないため、投与してもお腹の子に影響はないと報告があり、妊娠中や授乳中の方でも、安心して関節リウマチの治療を続けて頂けます。妊娠中・授乳中に関節リウマチの治療を断念すると、関節の変形が生じ、その後の生活の質(QOL)が著しく下がってしまう可能性があります。妊娠・授乳期もしっかりと治療を続けることが重要です。

腸管・腎・肝機能が弱っている・飲み薬が多すぎてつらい

飲み薬を服用すると胃や腸で吸収されて肝臓で分解され、腎臓で排出されます。そのため、服薬によって胃腸症状を引き起こしやすく、さらに肝臓や腎臓にも負担がかかります。関節リウマチだけでも数種類の薬を服用している患者様が多く、高血圧などの生活習慣病も併発している場合は、必然的に毎日服用する薬の数が増え、すべてを服用するのはかなりの負担になってしまい、飲み間違いも起こりやすくなります。 一方、生物学的製剤はタンパク質でできており、注射で投与するため内臓には影響ありません。生物学的製剤の注射による治療だけで、関節リウマチの薬が不要になる場合もあります。

生物学的製剤を使った治療に関する注意点

生物学的製剤は免疫系に影響するため、感染のリスクが高まるという欠点があります。これは関節リウマチの治療に使われる内服薬でも起こる問題であり、生物学的製剤に限らず関節リウマチの治療では注意が必要な点です。

当院で使用する生物学的製剤

インフリキシマブBS・レミケード(点滴)

TNFというサイトカインを抑える点滴です。落ち着くと2ヶ月に1回の点滴治療になり、投与間隔が最も長いものになります。アレルギーの頻度が他製剤よりやや多く、点滴時間も2時間程度要します。

エタネルセプトBS・エンブレル(皮下注射)

TNFと呼ばれる免疫物質を抑制する作用があります。妊娠中・授乳中でも安全に使用できます。2018年6月にエタネルセプトBSという後発薬が登場したことで、経済的負担も軽減できるようになりました。即効性、持続性、安全性が高いとされています。

アダリムマブBS・ヒュミラ(皮下注射)

TNFと呼ばれる免疫物質を抑える効果があります。関節リウマチだけでなく、その他幅広い疾患に効果があります。メトトレキサートという経口薬と併用されることが多く、相乗効果が期待できます。

BSとは

バイオシミラー(biosimilar)の略で、内服薬でいうジェネリックに相当します。

シンポニー(皮下注射)

TNFと呼ばれる免疫物質を抑える効果があります。4週間ごとに皮下注射を行います。1回に2倍の量を投与することも可能です。

シムジア(皮下注射)

TNFと呼ばれる免疫物質を抑える効果があります。初回から3回までは2回に分けて投与(倍量投与)するため、効果が早く現れやすい薬です。症状が重い患者様にも推奨されます。

ナノゾラ(皮下注射)

TNFを抑える薬剤で、ナノボディを使うことで非常に分子量が小さい薬剤になり、迅速で強い効果が期待されています。最も新しい生物学的製剤になります。

オレンシア(皮下注射、点滴)

T細胞と呼ばれる免疫細胞を抑制する作用があります。感染のリスクが低く、注射の痛みも少ないのが特徴です。多くの場合、内服薬を併用しなくても効果を発揮します。

アクテムラ(皮下注射、点滴)

IL-6と呼ばれる免疫物質を抑制する作用があります。他の生物学的製剤とは作用のメカニズムが異なるため、他の生物学的製剤で十分な効果が得られない患者様に推奨されます。薬価も比較的安価なため、経済的負担も軽減できます。

ケブザラ(皮下注射)

IL-6と呼ばれるサイトカインを抑えます。MTXの併用がなくても効果が高い薬剤になります。

投与方法

生物学的製剤の投与は注射(点滴または皮下注射)で行います。投与間隔は薬の種類によって異なり、週2回から2ヵ月に1回まで様々です。 点滴は病院などの医療機関で行いますが、皮下注射は患者様ご自身で行うことができ、ご自宅で注射することで通院回数を減らせるという利点もあります(病院内での注射も可能です)。また、注射時の痛みが少ないペン型の皮下注射もお使いいただけます。