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全身性強皮症

全身性強皮症とは?

全身性強皮症とは?約2万人以上の患者数が推定されていますが、潜在的な数を含めると実際には倍以上と言われています。不治の病と捉えられがちですが、近年では医学の進歩により症状の管理が容易になり、上手に付き合っていく疾患と捉えられています。

全身性強皮症の分類

全身性強皮症は、病状によって以下の2種類に大別されます。

びまん皮膚硬化型全身性強皮症

全身性強皮症に特有の症状が現れ、進行が早く発症5~6年でピークに達します。皮膚硬化は手指から体の中心にかけて広がります。

限局皮膚硬化型全身性強皮症

全身性強皮症の比較的軽症型です。末梢循環障害が先行して現れる、進行が緩やかなタイプです。皮膚硬化は手指のみと狭い範囲にとどまります。

全身性強皮症の症状

「末梢循環障害」「皮膚硬化」「内臓病変」など様々な症状がありますが、現れる症状の組み合わせや重症度は個人によって異なります。

皮膚硬化

皮膚硬化は手指の腫れから始まり、時にはこわばりを伴います。びまん型では末梢部位から皮膚の硬化が始まり、手の甲から体の中心に向かって進展します。顔面にも及び、表情や口の動きが制限されます。進行すると皮膚がつっぱり光沢が現れますが、発症5~6年後には自然に柔らかくなります。なお、「びまん型」では一部の患者様にのみ皮膚の硬化が見られますが、「限局型」では体幹にまで及ぶ硬化はほぼ見られません。

末梢循環障害(レイノー現象)

全身性強皮症初期症状の一つである「レイノー現象」は患者様の約90%で見られ、冷たい物による寒冷刺激や精神的緊張などが引き金となり手足の指が発作的に血行障害を生じ、皮膚が変色します。指が白くなる際には、しびれや痛みを伴います。対策として、携帯カイロなどで寒冷刺激を避けましょう。喫煙も血行を悪化させるので、禁煙して下さい。

臓器病変

臓器病変は主に「びまん型」で現れ、肺、腎臓、消化器に合併症が見られます。特に「肺線維症」「肺高血圧」は経過に大きな影響を与えるため、特別な注意が必要です。

肺症状

全身性強皮症では肺にも硬化が及び、「肺線維症」を発症することがあります。症状としては息切れ、慢性咳、疲れやすさ、階段の昇りづらさがあり、細菌への抵抗力も下がります。感染症を契機に「間質性肺炎」を招き、進行すると酸素吸入が必要になります。また、肺の血管の変化による「肺高血圧症」にも注意し、肺の状態を定期的に検査することが重要です。

皮膚症状

「色素異常」、「潰瘍」、「血管拡張」、「たこ・うおのめ」、及び皮膚の乾燥・かゆみがあります。潰瘍が現れた場合は医師の適切な治療が必要なため、自己処置は避けて下さい。

関節症状

肘・膝・手首に痛み・炎症が生じ、手指の関節が曲がったままこわばる(屈曲拘縮)こともあります。予防のため、手足を適度に動かす習慣が大切です。

消化器症状

胸焼けや逆流感を起こす「逆流性食道炎」、または慢性の下痢や便秘が起こることがあります。まれには腸の動きが停滞する「イレウス」症状も見られます。

腎症状

まれに「強皮症腎クリーゼ」が発生し、腎臓の血管が狭くなり高血圧を引き起こすことがあります。普段から、血圧を含めた生活習慣病のコントロールは重要です。特効薬があるため、突然の頭痛・頭部不快感・めまい・吐き気があれば早急に医師に連絡して下さい。

心症状

まれに心臓の筋肉が硬くなり、肺の変化が強いと心機能が弱まることがあります。心電図、心エコー検査などを定期的に受けることが推奨されます。

シェーグレン症候群(乾燥症状)

全身性強皮症と同様、膠原病かつ自己免疫疾患である「シェーグレン症候群」が合併することがあります。主に目・口の乾燥症状が見られ、唾液不足により虫歯・歯周病のリスクが高まります。

全身性強皮症の原因

原因は未解明ですが、「遺伝的要因」と「環境因子」が複雑に関与していると考えられています。免疫異常、繊維芽細胞の活性化、血管障害の3つが関連していると分かってきましたが、具体的な関わりは未だ調査中です。発症のきっかけには特定の化学物質や美容形成術、一部の抗がん剤などが知られていますが、必ず発症する訳ではありません。疾患感受性遺伝子は存在し、これが全身性強皮症にかかりやすくしている可能性があります。

全身性強皮症の検査・診断

全身性強皮症には多様な症状があるため、問診・診察・複数の検査を組み合わせて症状や臓器病変を評価し、総合的な判断が行われます。

全身性強皮症の検査

問診

症状の始まりや発生状況、ご家族の既往、生活への影響などについて詳しく伺います。レイノー現象(冷たい空気、水で手指が紫色/白に変化がほぼ必発です。

診察

皮膚の硬さはつまんで確認し、手・足の指先に潰瘍がないか、爪の付け根の毛細血管に内出血(爪上皮出血点)があるかを目視や顕微鏡で検査します。

血液検査

全身性強皮症の診断には自己抗体検査が重要です。全身性強皮症の患者様の大半が抗核抗体陽性を持っており、「抗Scl-70」「抗RNAポリメラーゼⅢ」「抗セントロメア」「抗U1RNP」のいずれかが陽性になります。その他、病状に応じ尿検査やCT、MRI、心電図なども行います。早期治療や進行防止のために定期的な検査が重要です。

全身性強皮症の診断

診断には厚生労働省研究班、EULARとACR、日本皮膚科学会などによるいくつかの基準があり、これらは主に皮膚硬化、皮膚病変、手指の循環障害、肺病変、自己抗体などで評価します。症状の重症度は最も重い症状を基準に判断し、当院ではこれらの基準に基づき総合的に診断します。

全身性強皮症の治療

病型に応じた薬物療法にて治療を進めます。進行の早い「びまん型」では、「疾患の治療」(疾患修飾療法)と、症状を和らげる「対症療法」が選択されます。
進行が遅い「限局型」では主に対症療法が行われます。治療薬の選択は臓器ごとの重症度分類に基づいて行われ、代表的な薬には次のようなものがあります。

副腎皮質ステロイド

抗炎症・免疫抑制作用のある薬で、皮膚硬化や倦怠感などに有効ですが、感染症リスクや副作用(骨粗しょう症、食欲増進、高血圧、糖尿病)があり、腎クリーゼを起こす可能性も報告されています。当院では効果と副作用のバランスを考慮して治療を行います。

免疫抑制剤

過剰な免疫に作用して皮膚や肺の硬化を抑えますが、感染症に敏感になる、赤血球や白血球の減少、不妊症、出血性膀胱炎などの副作用があります。リツキシマブという生物学的製剤が、強皮症に伴う皮膚硬化に承認されました。

血管拡張剤

血管を広げる作用によって、レイノー現象、手足のしびれ、皮膚潰瘍などの症状を改善する効果が期待されます。

抗線維化薬

全身性強皮症に伴う「間質性肺炎」の治療に用いられます。肺の硬化を最小限に抑え、呼吸機能を正常に保ちます。KL-6という肺の繊維化を示すマーカーも改善することがあります。副作用には下痢、体重減少、吐き気、肝機能障害があります。

その他、消化器症状には胃酸抑制薬、関節炎には痛み緩和薬など、症状別に治療薬を選択します。