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その他リウマチ性疾患

膠原病って何?

膠原病って何?膠原病とは、全身に自己免疫による炎症が広がる疾患の総称であり、その中にはシェーグレン症候群、成人発症スティル病、ベーチェット病、サルコイドーシスなどが含まれます。

シェーグレン症候群

中年期の女性に多く見られる、自己免疫疾患です。

原因

免疫系が、誤って自身の腺を攻撃してしまう疾患です。遺伝的要因、ウイルスなどの環境要因、免疫異常、女性ホルモンの要因などが組み合わさって起こると考えられています。

症状

目の乾燥(ドライアイ)、口の乾燥(ドライマウス)、鼻の穴の乾燥、唾液腺の腫れと痛み、息切れ、発熱、関節痛、脱毛、肌荒れ、夜間頻尿、紫斑、皮疹、レイノー現象、アレルギー、日光過敏症、膣の乾燥(性交不快感)、疲労感、記憶力の低下、頭痛、めまい、集中力の低下、気分の落ち込み、抑うつ傾向などが挙げられます

検査方法

唾液分泌の減少は、ガムテスト、サクソンテスト、シンチグラフィー、または唾液腺造影などで検査され、涙の分泌減少はシルマーテストで診断されます。また、角結膜の上皮障害がある場合や、抗SS‐A/Ro抗体か抗SS‐B/La抗体が陽性である場合でも、ローズベンガル試験または蛍光色素試験などが疾患の診断に用いられます。

治療方法

根本的な治療はなく、症状を緩和し、悪化を防ぐことが治療の目標となります。

1)眼乾燥

涙の分泌促進には、ヒアルロン酸ナトリウム点眼液、ジクアホソルナトリウム点眼液、レバミピド点眼液などが用いられます。また、涙の不足を補うためには、人工涙液や自己血清を希釈したものも用いられます。涙の蒸発を予防するためには、モイスチャーエイド(ドライアイ用眼鏡)として知られる、眼鏡のフレームにプラスチック製のカバーを取り付ける方法もあります。また、涙の排出を抑制するためには、鼻側の上下の涙点を涙点プラグで封鎖することがあります。

2)口腔乾燥

唾液の分泌を増やして口内の乾燥を治すために、セビメリン塩酸塩やピロカルピン塩酸塩が用いられます。ブロムヘキシン塩酸塩、人参養栄湯、麦門冬湯なども同様に使用されます。唾液の補充には、サリベートや口腔の保湿用ジェルやスプレーなどが使われることもあります。虫歯の予防や口内の真菌感染、口角炎の予防には、抗真菌薬などが使用されます。

3)膣の乾燥

エストロジェンの内服や、エストロジェン含有クリームなどを外用薬として使用します。

4)全身病変

重要臓器の病変がある場合に、ステロイドや免疫抑制剤が用いられます。関節痛や関節炎には鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬)を使用し、皮疹にはステロイド外用薬を使用します。

成人発症スティル病

スティル病(全身型若年性特発性関節炎)に似た症状を持つ、16歳以上に発症する疾患です。

原因

原因は解明されていませんが、白血球の一群である単球、やマクロファージという細胞が活性化し、炎症を引き起こす物質である炎症性サイトカインを大量に産生することで、全身に強い炎症が起こると考えられています。

検査方法

血液検査により、炎症反応、白血球の増加、肝機能、血清フェリチンの増加が認められます。

治療方法

一般的には副腎皮質ステロイド薬が選択されますが、その効果が見られないか再発する場合、または副腎皮質ステロイド薬の減量が難しい場合には、ステロイドパルス療法やトシリズマブなどの抗リウマチ生物学的製剤、免疫抑制剤の併用が検討されます。

ベーチェット病

ベーチェット病とは、慢性かつ再発性の全身性炎症性疾患です。航空内潰瘍、陰部潰瘍、眼症状(ぶどう膜炎など)、皮疹の4大病変が有名で、粘膜が障害される病気です。

原因

未だ病因はわかっていませんが、いくつかの内因性因子(遺伝的素因)と外因性因子(感染症およびその他の環境因子)により、白血球の機能が過剰に活発になると、結果として炎症が引き起こされると考えられています。内因性因子のうち、ヒト白血球抗原(HLA)血液型HLA-B51は、健常者では非健常者よりも高い比率を示すことが分かっています。外因性因子としては、虫歯菌を含む細菌やウイルスなどの微生物の関与が推測されています。

症状

主な症状として、再発性口腔粘膜アフタ性潰瘍(唇、頬の粘膜、舌、歯肉、口蓋にできる円形で境界が明瞭な潰瘍)、皮膚症状(結節性紅斑様皮疹、ざ瘡様皮疹、血栓性静脈炎、皮膚過敏症)、外陰部潰瘍、眼症状(虹彩毛細血管炎:目の痛み、充血など 網膜絡膜炎:視力低下)があります。
主な副症状には、関節炎や血管病変(血管型ベーチェット病:深部静脈血栓症、動脈瘤)、消化器病変(腸管型ベーチェット病:腹痛、下痢、下血)、神経病変(神経ベーチェット病:髄膜炎、脳幹脳炎、片麻痺、小脳症状、錐体路症状、認知症)、副睾丸炎などがあります。

検査方法

特徴的なのは針反応(痕跡が残る)ですが、診断の参考になる程度であり、鑑別方法にはなりません。また、血液検査などでも特有の指標は確立されていません。他の上記が否定され、上記症状があれば診断となります。

治療方法

関節の痛みや腫れに対する治療としては、非ステロイド性抗炎症薬が用いられます。

(1) 眼症状

病変が虹彩毛様体などの前眼部にとどまる眼炎症発作では、副腎皮質ステロイドの点眼や結膜下注射、虹彩癒着を防ぐ散瞳剤の投与などによる治療を行います。視力予後に直接影響する網脈絡膜炎による発作の場合には、ステロイドの局所投与や全身投与を行います。発作の予防には、コルヒチンやシクロスポリンも使用します。これらの治療にもかかわらず発作が起こる場合は、TNF阻害薬のインフリキシマブやアダリムマブが用いられます。

(2) 皮膚粘膜症状

副腎皮質ステロイド外用薬の局所投与とコルヒチンの内服が、治療の基本となります。それに加えて、口腔アフタ性潰瘍にはアプレミラスト(PDE5阻害薬)、結節性紅斑にはミノサイクリンやジアミノフェニルスルホン、毛嚢炎様発疹には抗菌薬が用いられ、難治例にはステロイドや免疫抑制薬が検討されます。

(3) 関節炎

急性の炎症への対処には、消炎鎮痛薬や経口ステロイドが使用され、発作の予防にはコルヒチンの使用が一般的です。それでも効果が不十分であれば、アザチオプリン、メトトレキサート、TNF阻害薬などを検討することがあります。

(4) 血管病変

主な治療法としてはステロイドやアザチオプリン、シクロホスファミド、メトトレキサートなどの免疫抑制療法が用いられ、ステロイドに抵抗する難治例に対してはTNF阻害薬が検討されます。
深部静脈血栓症の治療には抗凝固療法が行われますが、肺血管からの出血に対しては注意が必要です。大動脈病変や末梢動脈瘤に対しては手術が必要になりますが、手術と並行して免疫抑制療法も行います。

(5) 腸管病変

軽症から中等症の場合、5-アミノサリチル酸製剤(例: サラゾスルファピリジン)が選択され、中等症から重症の場合には副腎皮質ステロイド、TNF阻害剤、および栄養療法が使用されます。難治例ではチオプリン製剤の検討があり、腸管穿孔、重度の狭窄、膿瘍形成、大量出血の場合は手術が行われることがあります。

(6) 中枢神経病変

脳幹脳炎や髄膜炎などの急性炎症に対しては、ステロイドパルス療法を含むステロイドの大量投与が行われ、再発予防にはコルヒチンが使用されます。精神症状や人格変化を主とする慢性進行型にはメトトレキサートが処方されます。インフリキシマブの使用は難治性、再発性ともに検討されます。

サルコイドーシス

全身の様々な臓器に「肉芽腫」という結節ができる疾患です。肉芽腫とは、類上皮細胞やリンパ球などでできた集合体のことを言います。

原因

肉芽腫性病変は、何らかの物質がリンパ球、特にT細胞の活性を刺激し、これらの細胞が産生する物質がマクロファージ細胞を刺激することによって形成されます。

症状

(1)臓器特異的症状

  • 肺: 進行すると肺線維症を発症し、咳や息切れが現れることがあります。
  • 眼:眼の虹彩、毛様体、脈絡膜に炎症(ぶどう膜炎)が起こることが多く見られます。目のかすみ(霧視)、飛蚊症、充血やまぶしさ、視力低下などの症状が現れることもあります。黄斑浮腫、白内障、緑内障などの合併症も、視力低下や視野障害を引き起こすことがあります。
  • 皮膚: 皮膚における病変は、皮膚サルコイド、瘢痕浸潤、結節性紅斑に区分され、皮膚サルコイドには結節型、局面形成型、皮下型、びまん浸潤型が存在します。
  • 心臓: 心臓病変は主に2つのタイプに分類できます。伝導系が関与し、不整脈(心臓のポンプ機能が低下し、時に意識を失う)を来すものと、心臓を収縮させる筋肉が関与し、心不全(治療せずに放置すると、心臓の出力が低下し、息切れ、動悸および下肢の浮腫を伴う慢性心不全を来す)を来すものの2つです。他の臓器に病変がなく、心臓病変のみが存在する場合は、心臓限局性サルコイドーシスと呼ばれます。
  • 神経:神経サルコイドーシスは、部位によって異なる神経学的症状を引き起こします。具体的には、顔面神経麻痺、口のゆがみ、下垂体の腫瘤による尿崩症、多量の排尿、脊髄の痛み、手足のしびれ、体の痛み、および自律神経系の機能障害などが挙げられます。
  • 筋肉: ふくらはぎや他の筋肉が結節に侵されると、多くの場合で腫瘤が発生します。
  • 骨:手指の骨や足の趾骨が侵されることが多く、その際には多くの患者様が痛みを訴えます。握手の際に指の骨が折れることで症状に気づく「握手徴候」が多く見られます。
  • 表在リンパ節: 表在リンパ節は痛みを伴わずに腫れることがあります。
  • 上気道:鼻腔に病変が生じることが多く、鼻づまりを起こします。上咽頭腫瘤、副鼻腔炎、歯肉病変が生じることもあります。

(2)非特異的全身症状

疲労感、呼吸困難、痛み、発熱、耳鳴り、難聴、手足のしびれ、温痛覚の低下、および自律神経の障害などが見られます。

検査方法

アンジオテンシン変換酵素(ACE)とリゾチームの増加、蛋白分画中のガンマグロブリンや血液・尿中のカルシウムの上昇が見られるかを検査します。また、ツベルクリン反応が陽性から陰性に転じることもあり、ガリウムシンチグラム(患部に集中する)を用いて全身の状態と病変の活動性を評価します。より感度の高いFDG- PETスキャンも同じ目的で行われます。
気管支鏡検査による肺胞洗浄では、洗浄液中の総細胞数の増加やCD4陽性Tリンパ球の所見があれば、診断に有用です。最終的な確定診断には、生検で病変組織内に上皮細胞肉芽腫が確認される必要があります。

治療方法

この疾患は自然に回復することが多いため、軽症の患者様では通常、経過観察が行われます。ただし、症状が重い、進行している、または検査値に著しい異常がある場合は、一般的にはステロイドや免疫抑制剤による治療が選択されます。

膠原病の予防について

膠原病は予防できません。膠原病の患者様は感染症にかかりやすいため、風邪などの感染症には特に注意が必要です。普段の生活では、十分な睡眠とバランスの良い食事を心がけ、規則正しい生活を維持することが重要です。また、疾患によっては紫外線が引き金となることや、身体的・精神的なストレスが症状を悪化させる可能性があるため、これらを避けることも重要です。